溺愛プリンス
王子とあの日の図書館で
別々に、歩み出した……んだよねっっ!?
それは、帰国して数週間がたってからのことだ。
ハルがいないことを受け止めようとしていたあたしに、異変は突然訪れた。
「……え?なにこれ」
「…………」
呆然とするあたしと、茜。
見慣れたハズの和菓子屋『月島』には、たくさんの人でごった返していた。
お菓子を買う為に並んでいる……ってわけじゃなさそう。
だって、そこにいる人たちはどう見ても……。
その中のひとりがあたし達に気付く。
「あ!」
え?
見つけた!と言わんばかりにそう叫んだのは、マイクを持った男の人だ。
「いたぞ! 彼女だ!」
へ?
か、彼女!?
ぎょっとして思わず辺りを見渡してみるけど、そこにはあたしと茜しかいなくて。
ふたりで顔を見合わせる。
そうしてるうちに、月島に集まっていた人だかりが一気にこっちに向かって押し寄せてきた。
「彼女が小野田志穂さんだ! カメラカメラっ、すみません! ちょっとお話聞かせて下さいっ」
「あ、あたしっ!?」
「ハロルド王子とはどうなったんですか! 王子のあの発言は本当なのですか!」
「あの発言?」
その勢いに思わず後退りする。