溺愛プリンス
「志穂ちゃん? そこにいるの?」
わけがわからずに混乱していると、人だかりの中から篤さんが慌てて顔を出した。
「篤さんっ! 大丈夫なんですか?これっていったい……」
「今日テレビでね……」
篤さんの言葉はそこで途切れた。
最後まで聞く前に、あたしの足は踵を返して来た道を引き返していた。
「え、志穂?」
「茜、ごめんっ!」
茜の声にそう返すだけで精一杯。
だって……
だって……!
まま、マスコミの人たちが、追いかけてくるんだもんっ!
なんで?
あたし、もうハルとはなんの関係もなくなったのに、どうして?
「こ、こ……来ないでぇぇぇっ!!!」
「逃げた! 先回りしろっ、待ってください、小野田さんっ」
「きゃああああっ」
まるで鬼ごっこ。
今の状況が全く理解できない。
でも、とにかく彼らの執拗な追跡が怖くて。
あたしは必死に走って、人がたくさんいる駅のホームに駆け込んだ。