溺愛プリンス
「はあっ、はあっ……」
なんだったのだろう。
心臓がドクドクと波打っていて、ほんの少し気持ち悪い。
う……、こんなに走ったのいつぶりだろ。
深く息を吸い込んで、乱れた呼吸を整える。
たくさんの人が行きかう中、柱の影に身を隠しそっと周囲の様子をうかがった。
「……」
さすがにここまでは追ってこないかな。
ここは、大学行きの電車のホーム。
と、すぐに見慣れた電車がたくさんの人を乗せてホームに滑り込んできた。
さっきの人たちはあたしの名前を言っていた。
ってことは……やっぱりあたしを探しているんだよね。
でもなんで?
篤さんが言ってたことも気になるし……。
とにかく、一旦大学に戻ろう。
篤さんに連絡して、それから……。
電車に乗り込んで、鞄の中からスマホを取り出す。
茜、大丈夫かな……。
あたしみたいに追いかけられてないといいけど……。
不安になりながらもラインを開く。
そこには、あたしよりも先に茜からメッセージが来ていた。