溺愛プリンス


あたしの特等席。
ハルと、あたしが始まった場所。




「…………」




誰もいない。
本当に、もう……この図書館には誰ひとりといなかった。


どこかで期待してたのかもしれない。

そんなはずないのに。


前に進んでるんじゃなかったの?


あたしはきっと、まだずっとハルが好きなんだろうな……。
でも、それは決して後ろ向きな気持ちなんかじゃない。

気持ちを確かめ合う瞬間が、確かにあったんだもの。


あたしは、強くなれる。





そう思いながら、あたしは窓から沈みゆく太陽の光に目を細めた。


でも。
それでも……。




一歩も足が動かないよ…………。






今だけは、こうしててもいいよね?



この、思い出の場所に、少しだけ……。






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