溺愛プリンス
「空が、泣いてる?」
耳元で聞こえた声。
あたしを包み込んだ香りに、思考回路は切断された。
ううん、それだけじゃない。
あたしの心臓、止まってんじゃないかな……。
「…………」
なにこれ……。
うそ、どうなってんの?
これも、夢?
だって、だって…………
「なんだ、空じゃなくて志穂が泣いてんのか」
「…………」
「ほんと、志穂は泣き虫だな」
イジワルな口調。
それから、楽しそうな声に変わる。
ねえ、嘘だよね?
なんで?
「なに黙ってんだ。 お前の声、俺に聴かせてくれ」
「っ…………う、……、ハル……」