溺愛プリンス
それから、笑顔のハルはたった今思い出したみたいに。
なにかのついでみたいな感じで、トドメの一言を言い放った。
「あと俺、王位放棄してきた」
「はあ。そうなんですか…………
はっ!!!!?」
お、王位、ほほ、放棄!!?
なにそれ、なんで? な、なんでっ!!?
「なっ、な……」
言葉にならない。
ハルはあたしの動揺を楽しむかのように笑みを深くすると、その腕を伸ばしてくる。
また腕の中に抱きしめられる寸前でハッと我にかえり、胸を押しやった。
「ちょっと待ってください、またあたしの事からかってるんですか!?」
もうそこまでされたら、ただの王子様の戯言じゃすまないんだから!
あたしだって、許さな……
「あほ。こんなこと冗談で言うか。
ちゃんと婚約発表の時にそう宣言した。お前、途中で帰ったらしいな。決意表明聞いて帰るようにチケットも手配してやったというのに」
「はい?」
そ、そうだったの!?
うそ……うそ。
「だって、そんなこと一言も言ってくれてません!」
「お前のこの頭は脳みそ入ってないのか」
「のっ!?……でも知らなかったです!」
言った、言ってないなんて、本当はどうでもいいのに。