溺愛プリンス
その姿は、女の子なら一度は憧れる王子様そのものだ。
……じゃなくって。
“本物”なんだよね……。
どこかの国の次期王位継承者なんだって。
名前はハロルド・A・ローズベルト。
歳はあたしより2つ上の21歳。
日本に来たのは、他国の文化を学ぶため、なんだどか。
真っ黒な髪は、ひいお祖母さんが日本人だって噂。
ほんとのことは、わからないんだけどね。
「桜がよくお似合いね……」
ほっとため息と一緒にそんなセリフが聞こえた。
……そうかな。
あたしは少しだけ首を傾げて、止めていた足をまたすすめた。
ま、なんにしても。
あたしには関係ないんだけど?
こんな庶民を気にするなんて、絶対ないだろうし。
別にあたしも関わりたいなんて思ってない。
と言うか、むしろ近づかないようにしてる。
だって、何かの拍子に失礼な事して訴えられたりしたら困るもん。
王子様の周りに何人もの堅のイイ男の人達がいたのを思い出す。
うー、こわ。
あたしは、平凡でも人並みに幸せだと思ってる。
これ以上、何も望まないんだ。