溺愛プリンス
恐る恐る振り返る。
腰に手を当てて仁王立ちをした、その人にまたも血の気が引いて行く。
てゆか、皆、突然部屋に入って来るの、なんとかなんないのかな!!
「クロードさん……、えっと……お、おはようございます?」
「おはようございます。もう起床時間はとっくに過ぎていますよ?」
笑顔でそう言ったクロードさんは、隙のない気品あふれる仕草でシーツを掴む。
「っ!!」
グイッと持ち上げられる感覚に必死に食らいつく。
ギョッとして見上げると、真っ黒な笑顔のクロードさんはやれやれと言った感じで大げさにため息をついた。
「婚約発表はもうすぐだというのに……。志穂さま!ご家族の方も遠路遥々来られるのでしょう!?」
ちょっ!!
なぜかシーツを引っ張り合う攻防が続く。
そこでハッとした。あたしが服着てないの気付いてない?
うう、察してください、自分じゃ恥ずかしくて言えないからぁ!
「さぁ!起きてください。それまでには立派なレディにしてみせます。
今日もみっちりレッスン致しますよ!
さあ!!」
「は、はいっ」
わ、わかりましたから、シーツ引っ張るのやめてぇぇ!