溺愛プリンス
「はい」と顔を上げるのと同時。
いきなり強い力で手首を掴まれたかと思うと、あっと言う間に王子の顔が目の前にあった。
……なッ……!
「……あ、あの」
いきなりのとこで、体の自由を奪われる。
頭の中は真っ白。
体を包むのは、高級そうな香水の香り。
あたしは、目の前のブルーの瞳の中の自分と見つめ合っていた。
「すみませんって、それだけ?」
「……え?」
それって、どうゆう……。
声に出したくても、なぜかできなくて……。
怖い。
意地悪にささやかれた声に、鼓膜が震えて。
ついでに、胸がドクンって何かで叩かれたみたいに鼓動を始めた。
唇に、吐息がかかる距離。
それだけで、体がビクって反応する。
それを楽しむかのように、王子がクスリと笑った。
ジリジリと距離を詰められる。
伏し目がちの王子は、少し小首を傾げてあたしを覗き込んだ。
なに……
なんなの……
なんとか離れようと身をよじっても、強い力で腕を掴まれていて。
どうすることも出来なかった。