溺愛プリンス
「俺は、お前をもっと知りたい」
え……?
綺麗な髪がサラリと揺れて
王子がにっこりと微笑んだ。
ドクンって心臓が激しく上下した。
「……お…」
『王子』ってそう言いかけて、彼の人差し指があたしの言葉を遮った。
そっと触れた綺麗な長い指。
「ハル」
「え?」
「ハル。これからは、そう呼んで」
さっきまでのイジワルな王子はどこにもいなくて。
まるで囁くようにそう言うと、王子は細く笑った。
「……」
「志穂?」
「あの、でも……」
“ハル”なんて…そんなふうに呼べるはずない。
みんな彼の事を『ハロルド様』とか『ハロルド王子』ってそう呼ぶ。
あたしみたいな一般庶民がファーストネームを呼ぶなんて、恐れ多すぎる。
「言えない?」
言い淀んでいると、王子はあたしの長い髪にそっと指を絡ませた。