溺愛プリンス
ドクン
やっとの思いで出た言葉は、か細くて頼りない。
「聞こえないな」
「…………」
無表情で、あたしを見つめる彼の顔は。
ドクン
……ムカつく……。
な、何様……?
悔しくて、唇を噛みしめた。
王子はさらにその顔を寄せて、あたしを覗き込む。
甘ったるい香水の香りに、目眩を起こしそうだ。
ドクン
ドクン
「どうした、震えてるぞ」
言われて気付く。
掴まれた手が
再び触れ合いそうな唇が。
さっきから小刻みに震えてる事に。
ドックン
ドックン
あーもうっ!
自分の心臓の音に、押し潰されそうになってあたしはギュッと目を閉じた。
「志穂、言え」
「~~、ハル、ハル! も、もう離して!」
パッとうつむく。
しばらくの静寂の後。
掴まれていた手首が解放されて。
それと同時にあたしを包んでいた、高級そうな香水の香りがフッと消えた。
「……」