溺愛プリンス


お昼のオープンテラス。
久しぶりに自分で作ったお弁当のウインナーを頬張った時だった。



「ハロルド王子に連れ去られたってマジ?」

「ブハッ!……ごほっ、ごほ!」



いきなり隣に座っていた茜が興奮気味に身を乗り出した。



「その動揺っぷりは、マジなんだ……。あのさ、ここだけの話、王子とどうなってるの?」

「茜っ!」



王子とどうにかなるわけない!
だいたい茜はあたしの気持ち、知ってるでしょ?

その意味を込めて、あたしはお茶を飲みながらジロリと隣に座る茜を睨んだ。



「アハハ、怒んないでよ。ジョーダンだもん」

「……」



あたし、冗談にしていい事と、悪い事あると思う。



「でも前のバイトの後、ハロルド王子とどこかに行ったのはほんとなんでしょ?」

「……そ、それは……」



あの日の事は、茜にもまだ話してない。
と言うか、あたし自身いまだに現実の出来事だったのかよくわからないんだ。


でも、アクセサリーケースに揺れる、鍵のネックレスを今朝も見た。
そして、王子の事を思い出してしまう自分もいたりして。



< 64 / 317 >

この作品をシェア

pagetop