溺愛プリンス
お昼のオープンテラス。
久しぶりに自分で作ったお弁当のウインナーを頬張った時だった。
「ハロルド王子に連れ去られたってマジ?」
「ブハッ!……ごほっ、ごほ!」
いきなり隣に座っていた茜が興奮気味に身を乗り出した。
「その動揺っぷりは、マジなんだ……。あのさ、ここだけの話、王子とどうなってるの?」
「茜っ!」
王子とどうにかなるわけない!
だいたい茜はあたしの気持ち、知ってるでしょ?
その意味を込めて、あたしはお茶を飲みながらジロリと隣に座る茜を睨んだ。
「アハハ、怒んないでよ。ジョーダンだもん」
「……」
あたし、冗談にしていい事と、悪い事あると思う。
「でも前のバイトの後、ハロルド王子とどこかに行ったのはほんとなんでしょ?」
「……そ、それは……」
あの日の事は、茜にもまだ話してない。
と言うか、あたし自身いまだに現実の出来事だったのかよくわからないんだ。
でも、アクセサリーケースに揺れる、鍵のネックレスを今朝も見た。
そして、王子の事を思い出してしまう自分もいたりして。