溺愛プリンス


「ホテルで……食事して……」

「ホテル!?」

「あ、あのね!別にご飯食べただけで、なにもないんだからね?」


茜がさらに身を乗り出すから、慌てて言葉をつけたした。

そうだよ、別になにかあるわけじゃない。
ただ美味しいご飯食べて、キャンドルで、誕生日プレゼントってネックレス貰って……首筋に……。


うわ……余計なことまで思い出しちゃった……。


勝手に頬が火照る。




「……、……志穂、志穂?」

「え?」

「もぉ、ボーっとしすぎ。 でもなにか困った事があったらなんでも相談してね?」

「うん。ありがとう」



親友の心遣いに、胸があったかくなった。
ふたりで笑い合って、あたしはパックジュースに手を伸ばす。


甘いピーチティの香りが鼻に抜けた、その時。

スマホがメールの着信を伝えた。
何気なく覗き込むと、それはハルからで……。




「ブハっ!」

「え、ちょ……今度はなに?」



テーブルの上のお弁当を持ち上げて、茜が目を見開いた。



「ご、ごめん。なんでもない……」



慌てて口元をハンカチで押さえながら、苦笑いを零す。
それから、恐る恐るスマホを覗き込む。




【図書館に今すぐ来い】




なんなわけ?

茫然としていると、続けざまにメールが届く。
どれも相手は、ハル。



【俺を待たせるな】



「……」


なにそれ、なにそれ!
なんでそんな命令形なのっ?!
なんでそんな自己中なの?世の中の貴族の方々そうなのっ!!?



【全力で走って来い】



む、ムカつくんですけどーー!


< 65 / 317 >

この作品をシェア

pagetop