溺愛プリンス
王子と図書館で
「志穂ッ、志穂ってば! 外、大変なコトになってるよ?」
次の日。
講義を受けるために訪れた教室の窓際。
そのいちばん後ろの席に俯いて座っていたあたしに、心配そうに近づいてきたのは……
「……茜」
力なくそうつぶやくと、茜は悲しそうにその瞳を揺らした。
「それにしても……すっごい人だね。 志穂さ、いったい何したの?」
「……なにもしてないよ。 だから関わりたくなかったのに」
「え?どういう事?」
キョトンとするのは、親友の片桐茜(かたぎりあかね)。
切りそろえられた前髪が、彼女の大きなたれ目を強調していた。
ザワザワとする教室にチラリと視線をめぐらせて、そっと溜息をついた。
「ねぇねぇ、あの子? 昨日ハロルド様に話しかけられてたのって」
「嘘! あんな地味な子に話しかけるはずないよ」
「だよね、じゃあ、どの子?」
昨日の一件以来。
噂は瞬く間に広がっていた。