溺愛プリンス

あたし……夢でもみてるの?

目の前の状況に頭がついていかない。



「初めまして。ベルト王国第二王子ハロルド・A・ローズベルトと申します。本日は志穂さんの友人代表としてこちらに伺わせて頂きました。ご一緒してもよろしいでしょうか?」




ハルが……。
あのハルがあたしの家にいるんですけどー!

しかも、家族に挨拶なんかしてるんですけどっ!



王子様が笑えば、真っ白な歯がキラリと光る。

瞬間、天使の羽が花びらと一緒に彼の周りに飛んだ。
……気がした。


もちろんその姿は、”表の顔”。
ちまたで噂されてる、容姿端麗・頭脳明晰・さらには社交的。
まさに、それだ。


あたしは、彼の背中を眺めながら小さくため息をついた。



「え、ええ。もも、もちろんでございますよ。こんな狭い家ですが、どど、どうぞくつろいで行って下さいませ」


お母さん……、動揺しすぎ。

ハルの突然の訪問に、お母さんもしどろもどろ。
弟の瑞穂(みづほ)なんて、さっきからずっと固まりっぱなし。


そりゃそうだよね。


……はあ。
なんで、こんな事になってんの?





「……」


6月20日。
今日はお父さんの命日。
お仏壇の前で手を合わせるハルの横顔は、悔しいくらい綺麗だった。



ぼんやりとその横顔を見つめていると、いきなり腕をグイッとひかれた。



「ちょ、ちょっと、どういう事なの?王子様じゃないの、テレビで観た事あるわよ?」



それは物凄い顔をしたお母さんで……。


「どういう関係なの?アンタ!」


そう耳打ちされて、思わず口ごもる。



「ど、どうって……」



トモダチ?

……って、なんかそれも違う気がする……。

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