溺愛プリンス
午前の講義が終わると同時。
時間ぴったりに机の上のスマホにメッセージが届いた。
ん?
「志穂?どうしたの?」
茜が不思議そうに首を傾げた。
眉間にシワを寄せたまま画面を凝視するあたしの横から、茜が顔を覗かせる。
「……。ほんと、アンタタチってどんな関係なの?」
「……」
「ま、頑張って!」
苦笑しながもどこか楽しそうにそう言って、茜はポンとあたしの背中を叩いた。
教室で茜と別れると、急いで校門へ向かった。
お昼時のキャンパスは、たくさんの人。
穏やかな時間の中、足早に駆けていくあたしを数人が振り返った。
でも、そんなの関係ない。
彼がわかんないんなら、確かめるだけだよね!
急いで指定された場所へ向かう。
深く息を吸い込みながら、目立つであろうあの姿を探して立ち止まると、すぐに聞き覚えのある声が降ってきた。
「遅い! すぐに来いと言ったろ」
頭の上から突き刺さる偉そうな声に、慌てて振り向いた。
そう。
その声の主はもちろん、
「ハ、ハル!……どうしていつもいつも突然なんですか!あたしにだって予定ってもんが……」
うっ……。
確かめようって思ってた勢いあるあたしは、ハルを目の前にして消え失せる。
真っ黒な髪。
初夏の日差しの下で風に揺れるその前髪の奥で、ブルーの瞳が真っ直ぐにあたしを見下ろしていた。
な、なに?なんかすっごく恥ずかしい……。
あたし、ハルの前で思いっきり泣いちゃったんだよね。
押し黙ってしまったあたしをハルは腕を組んだまま眺め、その眉をクイッと持ち上げた。