溺愛プリンス


「あの!ハルっ」


ギュッと両手を握りしめ、ガバリと振り仰ぐ。

すぐ隣にいたハルが、「ん?」と首を傾げた。
その仕草に合わせて、真っ黒で柔らかな髪がふわりと揺れる。

ブルーの瞳に真っ直ぐに見下ろされ、条件反射のように心臓がドキっと跳ねた。



うっ!
そ、そんな無防備な顔……しないでください……。



「なに?」

「なにって……あの、こんな高価な物、あたし買えません」

「安心しろ。俺が買うんだから」



あたしはフルフルと頭を振って顔を上げた。



「もっとダメです!」

「なんで?」



本当にわからない、と首を傾げたハル。



「なんでって、それは……」

「それは?」

「……あ、あたりまえじゃないですか! ……ドレスなんて、困ります」




食事にも連れてってもらって、それにネックレスだって……。
それだって、一度もつけてないってのに。



「あたしには、こんなふうにしてもらう資格ないです」



それとも……ハルにはあるの?

まるで、餌付けされてる気分だよ……。



その時、頭上から呆れたようなため息が降ってきた。



< 98 / 317 >

この作品をシェア

pagetop