溺愛プリンス
「あの!ハルっ」
ギュッと両手を握りしめ、ガバリと振り仰ぐ。
すぐ隣にいたハルが、「ん?」と首を傾げた。
その仕草に合わせて、真っ黒で柔らかな髪がふわりと揺れる。
ブルーの瞳に真っ直ぐに見下ろされ、条件反射のように心臓がドキっと跳ねた。
うっ!
そ、そんな無防備な顔……しないでください……。
「なに?」
「なにって……あの、こんな高価な物、あたし買えません」
「安心しろ。俺が買うんだから」
あたしはフルフルと頭を振って顔を上げた。
「もっとダメです!」
「なんで?」
本当にわからない、と首を傾げたハル。
「なんでって、それは……」
「それは?」
「……あ、あたりまえじゃないですか! ……ドレスなんて、困ります」
食事にも連れてってもらって、それにネックレスだって……。
それだって、一度もつけてないってのに。
「あたしには、こんなふうにしてもらう資格ないです」
それとも……ハルにはあるの?
まるで、餌付けされてる気分だよ……。
その時、頭上から呆れたようなため息が降ってきた。