溺愛プリンス
「お前の基準なんか、俺にはどうでもいい」
「へ?」
視線を上げると、真っ黒な前髪の隙間から青い瞳が真っ直ぐにあたしを見下ろしていて。
目が合うと、グイッと細めて見せた。
「これは俺がしたくてしてること。お前の意見は聞いてない」
「なっ……」
なんなの、その言い方!
今度は怒りで顔が熱くなる。
そんなあたしを見て、なぜかハルはクイッと口角を持ち上げた。
……ぐっ。
意地悪な顔。心底楽しそうにあたしが何か言うのを待ってる。
ここで反論したら、きっとハルの思うつぼ。
冷静に……。
あたしはキュッと唇を引き結んで、顎を上げてハルを見上げる。
「とにかく!これは受け取れません。あたしにはお返しできる物もないですし、お気持ちだけで結構です」
そう言い放つと、ハルにクルリと背を向けた。
フィッテングルームに入ってしまえば、いくらハルでも入って来れないはず。
カツンとヒールを脱いで、カーテンを引いた。
ちょっと……言い過ぎだったかな。
ヤな女だったかも。
ハルの気まぐれで構われてるにせよ、彼の好意に甘えてたのはたしか。
でもそれも、もうやめなきゃ。
だって、今日ので思い知った。
いくらからかわれても、優しくされたとしても……。
彼は住む世界の違う人。
ハロルド王子なんだって……。
「それで?」
――!?
小さくため息をついた瞬間、すぐ後ろで声がして思わず肩が飛び跳ねた。