オレンジ



「なぁ、知ってるか?」


「ん?」



隣にいる美乃里に向かって俺は問い掛けた



「紫陽花ってな、太陽みたいに丸いけど、太陽にはあんまり会えなくてじめじめした時期に咲くんだ」


「そんなの知ってるよ!何言ってんの?」



確かに、ここまでは誰もが分かること


でもな



「そんな梅雨の時期でも、太陽とは会えるんだよ。ずっと、紫陽花は太陽に憧れてたんだ。太陽に気付いてもらえるように丸く咲くようになったんだ」


「ふーん…何それ」



知るわけねぇよ


だって、俺が勝手に考えたことだから



つまり、紫陽花は雲みたいな広い心をもった先生より俺がいいってこと


自分で言うのも恥ずかしいけどな



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