オレンジ



「あ、ありがとう」



と、折り畳み傘を受けとると



「じゃあ、さよなら」



と微笑んで、傘をさし歩いていってしまった


俺はその後ろ姿から目をそらすことができなくて、ただ姿が見えなくなるまで見ていた


こんなことって、あるんだ…


貸してもらった傘をみて、自然と緩む口元を手で隠した


やべーっ、めっちゃ嬉しい


ニヤニヤしながら傘をさし、歩き出した俺は、周りから見ると凄く気持ち悪い奴だ



そして、気づいたんだ


1日の彼女の行動でこんなにも俺を悩ませたり、喜ばせたりするのは


由希音に恋してるからなんだ、と…



それからの日々は、いつも彼女がいて


彼女行動が、表情が、俺を動かした



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