オレンジ
├2人の想い
side由希音
…これでよかったんだ、これで
会えただけで十分
なのになんで、こんなにも涙が出るんだろう
泣いてるなんて、ばれないように私は涙を拭わず歩いた
もう瞬くんは前に進んでるんだから、迷惑はかけられない…
帰り際の浜辺で颯太くんに言われた言葉が頭の中でなんども繰り返されている
『瞬はこのあと会う約束してる女の子がいるんだよ』
わかってた、わかってたつもりだった
いつまでも私を想ってくれてるなんて、自惚れてた
なんてばかなんだろう
わかりきってることなのにどうしてそう考えなかったのだろう
せめてありがとうと伝えればよかった
なんて、今更考えても遅い
もう、これでさよならなんだから
「…バイバイ、しゅっ「由希音ー!」」
えっ?
その声に足が止まった
「由希音!」