オレンジ



外に出ると、雪が降っていた



もうこんな時期なんだなぁー



空を見上げ、そう思った



あれから―…あの卒業式から、もうこんなに時間が経っている



「ははっ…」



俺って重症だな…



乾いた笑いをこぼし、自分の車へと向かおうと足を一歩踏み出そうとしたその瞬間



「…相川先生」



その声は、俺がずっと恋していた声で…ずっと聞きたかった声で…



ゆっくり、顔を上げた先にいたのは



「恋乃梨…」



ずっと会いたかったあいつがいた



「先生に会いに来ちゃった」


「会いに来ちゃったって、なんで…」



なんで、俺に会いに…


『コノが渡した花、シオンって言うんだよ』



…“あなたを忘れない”って、自惚れてもいいのか?





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