オレンジ



「わたしね、ずっと先生に言えなかったことがあるの…」



…言えなかったこと?



「本当は、卒業式の日に言おうとしたの…でも」



そういって俯いた恋乃梨



「…でも?」



なんだよ…



「…でも、言えなかった…先生の泣きながら笑う姿がすごく切なくて…」


涙を堪えながら話す恋乃梨が、俺の胸を締め付けた



「…でも、綺麗だったの…綺麗すぎて、言えなかった…



…っ先生?わたし、ずっと先生のこと好きだったの…」



涙を目に溜めて、真っ直ぐ俺を見て言った



「…ずっと、忘れられなかった…だから、伝えにきたのっ」



涙が一粒流れた瞬間、俺は恋乃梨の腕を引きギュッと抱き締めた…



「俺も…俺も、お前がずっと好きだった…忘れられなかった…」




< 97 / 225 >

この作品をシェア

pagetop