老人ホームと女子高生
「あー。いたいた矢沢さん。そろそろ始まるから上に行こうか。」


クマの着ぐるみ?のスタッフがやって来た。


「ひなたちゃんだよね?君も行こう。悠希さんが待ってるよ。」




スタッフに着いて行こうとした時、ニコニコお婆ちゃんが手を握ってきた。


「え?」


「矢沢さん、ひなたちゃんが気に入ったみたいだね。ひなたちゃん、そのまま手を繋いでいてくれるかな?」


「はぁ。」


矢沢さんっていうのか。ニコニコ婆さん。

ふと見ると、ニコニコ婆さんは私の手を両手で握って、ニコニコしながらヨタヨタと歩き始めた。



なんだろう?

ニコニコしてるけど、不安げな感じが伝わってくる。


子供みたいだ。この人。



案内された3階に着き、エレベーターを降りると薄暗くなっていた。


これも演出?

そう思った瞬間、隣から凄い声が聞こえた。



「嫌だ!嫌だよ!来るよ!来るよ!」



「えー!?」



叫び声の主はニコニコ婆さんの矢沢さんだった。


私はかなり驚いていた。


「ひなたちゃん、手離さないで握っていてあげてね。」


スタッフはそう言って


「矢沢さん。大丈夫だよ~。一人じゃないからね~。ずっと一緒にいるからね~。手繋いでいようね~。」


ゆっくりとニコニコ婆さんの耳元で喋った。



私はワケも解らず、ただ握られた手を強く強く握っていた。




しばらくすると、目が慣れてきたのか?ニコニコ婆さんは落ち着き、またニコニコと笑うと


「なんだぁ~。もう夜なのかい?」


穏やかに言った。
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