Noёl


…学校についてすぐに、隣の教室へ向かった。

緊張しながら教室を覗く。
案の定、彼女は窓際の席で頬杖をついていた。
その横顔は、相変わらず息がつまる程綺麗で。

俺は一呼吸おいて、彼女の名前を呼んだ。


「藤木!」


彼女の視線が動く。
目が合って、俺の心臓は容赦なく跳ねた。

ヤベェ、落ち着けって。

俺は軽く手招きをして、彼女はそれに素直に従ってやって来た。
立ち上がる拍子に、長い髪の毛がさらっと揺れた。


「なぁに?」

パタンと教室のドアを閉めながら彼女は言った。

その可愛らしい声は、美人の部類に入る彼女の整った顔と妙にミスマッチ。
でも俺は、そのギャップが好きだ。

「あっと…や、ちょっとこっち、いい?」

登校してくる生徒の視線が集まる廊下の真ん中でする話でもないから、俺は彼女を階段横へ誘った。
彼女は素直に着いてくる。
ポーカーフェイスのその顔じゃ、今から俺が言うことを予想してるのかどうなのかがわからない。

「なぁに?」
「あの…さ。お前…柏木のことふったってマジ?」
「カシワギ?」

俺を真っ直ぐ見つめたまま小首を傾げる。その大きな瞳が綺麗すぎて、俺は思わず視線をそらした。


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