Noёl
「ほら、一昨日お前に告った…野球部の、背の高い…」
「あぁ、一昨日の彼ね」
一昨日の彼。
一体彼女は、何人の男をふってきたのか。
まぁわからないこともない。彼女とイブを過ごしたいと願う男が少ないはずはないのだ。
そして俺も、その1人。
「河口の友達だったんだ」
「うん、まぁ…」
「何か言われて来たの?」
「や、柏木の話じゃなくて…」
益々不思議そうにする彼女に、俺は意を決して言った。
「き、今日さ!お前…予定ある?」
「うん、ある」
空回りした気合いというのは、こういうことだろうか。
一気に気が抜けていく。
「あ…あるんだ」
「なぁに?何かあった?」
「いや…イブだけでも一緒に過ごしたいって…」
そこまで言って、俺は思わず古典的に手で口を押さえた。
気が抜けすぎて、思わず言ってしまった本音。
バカだ、俺!
何口走ってんだよ!
彼女はいよいよ目を大きくして俺を見つめた。
穴があったら入りたいとは、まさにこれだ。
訂正しようとした瞬間、彼女が先に口を開いた。
「いいよ」
「…へ?」
「河口ならいいよ」