Noёl
……………
最後まで迷った。
バイトが終わり、ぼんやりと部屋で考える。
約束はしていなかった。
でも普通、恋人同士なら一緒に過ごすであろうクリスマスイブ。
…恋人同士。
昨日、絵利からメールがきていた。でも俺は返していない。
俺は絵利に甘えていた。傷つけているとわかっているのに、切り捨てることのできない自分がいる。
彼女もそうなのだろうか。
そうして俺を、拠り所にしているのだろうか。
友梨と出会ったのは、前のバイト先だった。
美人だけどどこか影のあるその出で立ちに、俺はいとも簡単にはまった。
付き合おうとか、口約束は何もない。ただ友梨は、拒むことなく俺を受け入れてくれた。
俺は知らなかった。
友梨の影を、知ろうとしなかったのだ。
『イブは…一緒に過ごせないかもしれない』
そのことを告げた時の友梨の顔は、はっきりと俺の脳裏に染み込んだ。
見たことのない友梨が、そこにはいた。