コンプレックスなふたり☆
噂の優希くん


♀優希side♀


「面っっ!」


──バシッンン!


彼女の叫び声と竹刀で叩いた音だけが辺りに響き渡る。


「一本! そこまで!」


審判が言い終わるのと同時にこれまでの試合とは比べならない程、凄い歓声が沸き起こった。


「きゃあああ!! 優希様ぁぁ!」

「今日も一段と格好いいわ!」

「他の男子なんかより、何千倍も素敵です!」


少女へ向けて、様々な女子の声が飛び交う。

彼女がひとつでも試合に出れば、勝ち負け関係なしに歓声が出るくらいの人気ぶりだ。

被っていた防具を外す。

それなりに広さはある此処、武道場では剣道部による仲間同士での練習試合が行われていた。

広さはあるといっても、体育館程ではない。

逆に体育館より広かったらそちらの方が驚きだ。

此処にいるギャラリー達は、朝練がないもので集まっている人々で、女子だけでなく男子も混ざっている。

因みに顧問は今は此処にはいない。

ふぅと息を吐き出して白い無地のタオルで汗を拭き取っていると、聞き慣れた声が少女にかけられた。


「相変わらず今日もカッコいいねー? 優希くんっ」


ハートマークがつきそうな勢いでそう呼ぶ身長が低めの少女。 彼女に向かって“くん”付けでこんな風に言うことが可能な人物はこの世でただひとり。



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