コンプレックスなふたり☆
噂の遥ちゃん


♂遥side♂


「……ヤベ、マジ眠」


ひとりの男子生徒は欠伸をしながらのったりとした動作で部室の扉を開ける。

中はまだあまり人がいないだろうと思っていたが、予想通り先輩後輩合わせても数人しか来ていなかった。

(…ま、まだ集合まで時間あるしな)


此処、美術部は運動部と比べて上下関係が激しくなく、さらに用具準備とかの必要がないため、来るのはバラバラだ。

必要な道具がある場合は、個人個人で用意する。

その理由は、終わるペースが人によって異なる為なのが理由だ。

教室の机よりも少し大きめの机、白い壁には様々な美術部所属の生徒作品や美術展をやる場所や日程が書かれた紙等、色々。

机が少し大きめなのは多分、絵を描きやすくする為のものと遥は考えている。

後輩と先輩に朝の挨拶を済ませ、いつもの定位置に向かう。


「よぉ、遥ちゃん!」


声がする方を見ると、一応親友の直哉(ナオヤ)がいた。


(……毎回毎回、うぜぇな)


遥と呼ばれた男はそう感じながらも、直哉の左隣に腰をおろす。


「今日も可愛いなぁ? はーるかちゃん!」

「……」


ゴンッ、と真横から鈍い痛そうな音が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

彼は頭を抱えて悶えている。

此処にいた先輩や後輩等は何事かと視線を向けたが、またかと肩をすくめ何もなかった素振りをした。



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