コンプレックスなふたり☆


いつの間にか全員揃ったみたいで、先程まであんなに煩かった教室が、今ではスッスッと描く音しか聞こえない。

手を滑らかに滑らせながら、彼は自然と頬を緩めた。


(…この音が好きなんだよな)


静かな部屋、耳に届くのは外で部活をやっている生徒の掛け声と風に身を震わせる木々。

誰もが集中して、自身の完成していない作品を仕上げる。

スーッと伸びやかな音、跳ねる様にあちらこちらにとびかってる姿はまるでウサギみたいで。

今度は筆をバケツの水につけたのか、ジャボン、とカエルが水面に潜ったような音が聞こえた気がした。

筆でスラスラスラッと気持ちいい感じは蛇でも動いているのだろうか。

鉛筆でも筆でも、この微妙に違う音は耳に入れていてとても愉快だ。



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