コンプレックスなふたり☆
「……なぁ工藤」
その様子を眺めていた遥は、いつの間に彼女の後ろへ移動したのか、優希を自らの方へぐっと引き寄せてお腹に手を回した。
勿論彼女は何が起きたかわからずパニック状態に陥り、掴んでいた竹刀を落とす。
「……彼氏、いるのか?」
「うぇっ?」
驚きのあまり、変な声を出してしまった。
(ななな、何、急に!)
頭がもうすでに混乱しており、顔が赤いのはあきらかだ。
「いるのか?」
耳元から、彼が言葉を発する度に息遣いが聞こえる。
それが恥ずかしくて、くすぐったくて。
「い、いないよ?」
俯いてるしかなかった。
「……ふーん」
するとさらに、力を籠めて抱き寄せられる。
(わわわっ! 何やってんの、山下!)
身体中が、炎を宿したように熱い。
胸のざわめきが彼に届いてしまいそうで、必死に自分を落ち着かせた。
だがそれもすぐに崩されることになる、遥の言葉によって。
「……だったらさ、俺を彼氏にしてよ」
「え?」
(今、なんて…?)