てん ―The pure story―
「おばちゃん、おばちゃんはパジャマに着替えなくてもいいの?」
タカシが、つんつるてんのパジャマに袖を通しながら奈央に尋ねた。
奈央が思い出にとっておいたフェザー級のボクサーだった中岡のパジャマは、それより10センチほど大きいタカシには小さかったようだ。
「おばちゃんは、あっちで着替えるからいいのよ」
つかの間、奈央は中岡を思い出していた。
「ふーん。ぼくとぼくのママは、いつもパジャマを着替える競争をしたよ。たいがいはぼくが勝ったんだ」
タカシは得意そうにあごをしゃくると胸を張った。