てん ―The pure story―
「じゃあ、何かお話して。おうたでもいい」
布団に潜って、タカシは奈央の手を握った。
――しょうがないな、話は長くなるし、じゃあ歌でもうたうか――
奈央はひとつ咳払いをした。
「咲いたー、咲いたー、チューリップの花が、どの花見てもーきーれーいーだな」
「あんまりじょうずじゃない」
タカシは眉根をひそめた。
「文句言うなら歌ってあげない」
奈央はそっぽを向くふりをした。
「・・・じゃ、聞く」
奈央が熱唱している途中で、タカシは眠ってしまった。
「きれいな顔、本来なら随分モテるだろうに・・・」
奈央は立ち上がると明かりを消した。