てん ―The pure story―
「というわけで、おじさんたち大喜びなんです」
配達されたおしぼりを、袋から出して保温器に入れながら奈央は言った。
「へーぇ、たいしたものねぇ。ほら、そういう子は世界中の都市の名前や、全ての鉄道の駅名を言えるとか、うんと数字に強かったりとかするって聞いたことあるわ。レインマンのダスティン・ホフマンが演じた主人公のようにさ。ちょっと違うか。でも興味あるものは何でも覚えるんじゃない?」
ベティママが突き出しの下ごしらえをしながらそう言った。
「そうなのかなぁ」
奈央が首を傾げるのも無理なかった。
休憩室ですばるとテレビを見てるタカシは、アパートでは目玉焼きひとつ焼けないのだから。