てん ―The pure story―
「おばちゃん、こんにちは。てんちゃんは?」
ケンとかおりを連れて〔てがる〕に行くと、奈央は外にいたおばちゃんにそう言った。
タコ焼きはおじさんがしていた。もうだいぶよくなって、身体がナマるからとたまにカウンターに立っていた。
「あれぇ、さっき奈央ちゃんの店の友達とかいう太った人がきて、連れてっちゃったよ。てんちゃんは、奈央ちゃんが待ってるからとか言われて喜んでついてった。すばるちゃんなら奥でテレビ見てるけど」
おじさんが店から出てきてそう言った。
「ユタカって男だわ!おじさん、てんちゃんどこ連れて行かれたかわからない?」
「ああ、埠頭に行くとか言ってたな。ベイブリッジのパーキングでみんな待ってる、とかも言ってた」
「おじさんごめんなさい、もう少しすばるを預かってください!ケン車だして!!」
「よし、わかった!」
「なにが、あったの?」
かおりが訳が分からないという顔をして、奈央は車で話すわと言った。