てん ―The pure story―
「奈央おばちゃんはどこさ」
ユタカが乱暴に運転するシャコタンのリアーシートで、タカシはそわそわして言った。
「ヘッド、まだゆうべのジョークの続きですかぁ。たのんますよ、以前の走りで。・・・レイダースを復活させたら、今度こそ俺を馬鹿にしている奴らを思い知らせてやる」
ユタカはそう言ってタイヤを鳴らし、埠頭に向かって走り出した。
数十台のバイクがそれに続いた。
「先頭キルってなぁ、えれぇ気分イイぜ!ムチャクチャ病みつきになるぜ!」
ユタカは時折バックミラーで、後続のバイク集団をうっとりと眺めた。
陶酔していた彼は、ミラーの端に映るタカシの怯えきった表情に気づかなかった。