てん ―The pure story―



タカシは二年間昏睡状態のままだった。その治療費のため、一馬の財産は底をついた。



それでも彼が目覚めた日、一馬は神に感謝した。



連絡を受けて病院に駆けつけた一馬を待っていたのは、幼児の知能となったタカシの姿だった。



目の前にあった希望が音をたてて崩壊した。



だが、新たな喜びがすぐに押し寄せてきた。タカシが保護をもとめる瞳で一馬に腕をのばしてきたのだ。



一馬は父親としての喜びを全身で感じていた。



タカシを受け止めよう、今までの謝罪も含めて全身全霊で。



一馬はタカシと過ごすために、比較的自由のきく会社に転職した。



日中一馬が看れないときは看護師が、それ以外は殆どつきっきりでリハビリをした。



タカシは日増しに回復し、幼児の知能から少しずつ成長していった。



しかし、再び芽生え始めた希望の木が成長を止めた。担当医師は知能回復はここまでだろうと診断したのだ。



スローな動きは今後リハビリ次第でほぼ回復するだろう、と医師は付け加えた。



せめてもの慰めだったのだろうが、一馬には何の救いにもならなかった。



自分の息子が幼稚園児のようなまま一生を過ごす。結婚もできない。それどころか自分に何かあったら施設に行く以外ないではないか。この三年間は無駄だったのだ。




一馬は深く暗い闇に、放り込まれたようだった。

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