てん ―The pure story―
「それで、てんちゃんのお父さんは納得したの?」
かおりが聞いた。
「ずっとってのは保留だけど、とりあえずわたしたちとてんちゃんが住むのは了承してくださったの。・・・あの後てんちゃんは落ち着きを取り戻して、お父さんと話をしたわ。お父さんは彼に選択させたのよ。もちろんすぐにここを選んでくれたわ。でも、あの奥さんがいなければ分からなかったかも。なにしろ血を分けた親子だもの。帰られるときお父さんは随分寂しそうだった」
奈央はかおりの向かい側に座って、ミネラルウォーターのボトルを差し出した。
「そっかぁ、奈央は21にして二人の子持ちになったのかぁ」
「ひとりは、ふたつ年上よ」
「頑張れよぉ、これからが大変よ。すばるはどんどん成長するしね」
「わかってる、でもてんちゃんの奇跡も諦めないわ」