てん ―The pure story―
タカシが思い出したように振り向いた。
「あのね、奈央おばちゃん。ぼくとすばるで競争するんだよ、ねっ」
タカシがすばるに相槌を求めて、すばるがうんと言った。
「えっ?なんの競争?」
奈央はふたりに聞いた。
「ききたい?」
タカシが言ってすばるも
「ききたい?」
とまねをした。
「うん、聞きたい」
「私も聞きたーい」
かおりが身を乗り出した。
「あのねっ、ぼくたち大きくなったら、どっちかが奈央おばちゃんをお嫁さんにすることに決めたんだ」
タカシは魅力的な瞳で奈央を見つめた。
一瞬沈黙が走った。
「すごーい!こんないい男ふたりもキープできて、うらやましい」
かおりが奈央をじーっと見て、からかうように言った。
「カオリおばちゃんにはケンおじちゃんがいるから、だめ」
タカシが言った。
「それは残念!」
かおりはがっくりして見せた。
夕方ケンが迎えに来て、新しい家族の門出を祝ってファミレスでご馳走してくれた。
相変わらずふたりの注文は〔お子様ランチ〕だった。