てん ―The pure story―
未来への一歩
タカシと土手で会ってから一年が過ぎ、暑い夏も終わろうとしていた。
奈央はタカシとすばるを連れて、かおりのいる病院を訪ねていた。
「カオリおばちゃん、赤ちゃんかわいーねー!」
タカシとすばるはベッドを覗き込んでそう言った。
「ありがとう、ふたりとも仲よくしてくれる?」
ふたりは、うん、する。と胸を張った。
「名前は決めたの?」
奈央が花瓶に生けた花を、ベッドサイドのテーブルに置きながら尋ねた。
「それがケンのやつ、女の子の名前しか考えてなくってさ」
かおりが笑った。
「男の子のほうがいいよ」
タカシが口を挟んだ。
「え、どうして?」
かおりが彼のほうを向いて言った。