てん ―The pure story―
ぶきっちょな恋愛
「今日は、ちょっとパス」
かおりの誘いに奈央は首を振った。
「ほよよーっ、工事くんだねっ」
かおりがおどけた。
「誰よ、コージって」
奈央は首を傾げた。
「工事現場にいるから工事くんよ」
「勝手に安直な名前つけないでよっ」
「だって、あいつ無視するんだもの」
「聞こえなかっただけよっ」
「おーおー、ムキになっちゃって!いいよ、じゃ先帰るわ」
――ヤスシは失恋だな、こりゃ――
かおりはバッグを肩にまわして、背中で手を振ると教室を出た。