てん ―The pure story―



中岡は奈央に自分のことを話し始めた。






ボクシングのインターハイで準優勝した中岡は、大学に特待生として入った。


二ヵ月後事故で父を亡くし、母もすでに他界していたため、残された祖母の世話を余儀なくされた。


ボクシングを断念し、大学を辞め、生活のために手っ取り早く稼げる仕事を転々とした。


その後祖母も亡くなり、天涯孤独になった中岡は夢を諦めきれずに三年後ジムの練習生として、再びボクシングを始めた。


しかし思ったよりブランクが大きく、同期の選手から出遅れてしまった。


それを努力でカバーし、今年やっとフェザー級チャンピオンの相手に大抜擢された。本命だった相手がコンディション不足のためタイトルマッチを辞退し中岡におはちがまわってきたのだ。






「俺ももうトシだし、最後のチャンスだと思ってるよ」



中岡はそう言ってはにかんだ。





「そろそろ出るか」


中岡の言葉に奈央は黙って頷いた。


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