てん ―The pure story―
昼間学校でかおりに予定を聞かれた奈央は、夜は空いてると言ってしまっていた。
ところが工事現場の都合で、中岡の仕事が急遽休みになってしまった。
「出かけるのか?」
中岡が捨てられた子犬のように、悲しそうな目をした。
「どうしようかなぁ」
奈央は、中岡をじらしてみせた。
――やすしには悪いけど、途中参加にさせてもらおう――
「行くな。一緒にいよう。なっ」
すがるような声に奈央はニッコリ微笑んだ。
「宗、明かりを消して」
中岡は飛び上がるように立ち上がって、電気のスイッチを切った。