てん ―The pure story―
「よう、元気だったか?どこに潜んでたんだ?」
だらしなくソファに寝そべっていた原田が、相変わらず奈央の身体を舐めまわすように見て言った。
「まーくん、この子ったら急に結婚するなんて言うのよ!まーくんからも何とか言ってやって」
「ほーぅ、さては色気づきやがったな。ここ二ヶ月そのオス犬の小屋にいたのか?」
「まーくん、下品な言葉遣いしないで」
ゆりこが原田を一瞥した。
「とにかくお母さん許しませんよ。学校へはちゃんと行っていたみたいだったから、うるさいことは言わなかったけど、今日からはキチンと三人で暮らしましょうね」
ゆりこは原田と奈央の手を掴んで、そう言った。
――学校さえ行っていれば体裁が保てるから、どこにいるか探し出す試みもしなかったくせに――
奈央は唇をかみ締めた。
「よし、俺もいい親父になるよう努力するかな。それよりゆりこ、風呂の支度をしてくれよ。汗かいちまって。一緒に入るか久しぶりに」
原田がゆりこの尻を撫で回して言った。
「やめてったら、まーくんたら奈央の前で。いいわ、すぐ支度する」
ゆりこは鼻歌を歌いながらバスルームへ向かった。