てん ―The pure story―
「こんにちは、ずっと朝からここにいるでしょう?息子が気にしちゃって、・・・あのぉ、何をしてらっしゃるんですか?」
「あり・・・ありを見てるの」
青年が下を向いたまま言った。
すばるがいきなりぴったりと彼に寄り添った。
奈央は驚いてすばるを見た。
数人を除いて知人にさえ心を許さない子だ。
奈央はとりあえず気をとりなおして青年に聞いた。
「あ・・り・・ですか?」
奈央は青年の言葉のイントネーションが少しおかしいと気づいた。