てん ―The pure story―
奈央は中学に入り、母はカルチャーセンターやボランティア活動にせっせと出かけた。
奈央の中学生活は可もなく不可もなく平々凡々と過ぎていった。
母は生活が合っているらしく充実した日々を送っていた。生活費の心配がいっさいないのもその理由だった。
奈央が中学を卒業する頃、母は一人の若い男性を夕食に招待した。
男性は礼儀正しく奈央に挨拶をした。
「原田正彦と言います。お母さんとはボランティアのサークルで知り合って・・・」
「奈央です。母がお世話になっています」
原田はとても明るく、会話も楽しく、夕食は和んだものとなった。
母は、少女のようにはしゃいで原田をじっと見つめていた。
奈央は母に理解を示した。
父がいなくなって7年が過ぎようとしている。母にも新しい人生が必要だ。
そして、原田はとてもいい人らしい・・・・と。