アネモネの花束を君に


―――キキッ



その音を聞き、前を見るとそこには車が止まっていた。




――――パタン



「桜様、真白様乗ってください!」


八尋兄様たちをいつも運転している鈴村さんが車から出てきた。


「鈴村さん、ありがとうございます。」



真白がそう言って、私の手を引きながら車に乗り込んだ。


「うわ……」


いきなり引っ張られていたので、思わず言葉が出てしまった。


「鈴村さん、ありがとうございます。」


「いえいえ。お気になさらずとも、大丈夫です。行き先は大学でよろしいですよね?」


「はい。ですが、鈴村さんはどうしているんですか?確か…今日は八尋様たち会合があったはずですが?」

息が上がっていて答えられなかった私の代わりに真白が答えた。



そうなのだ。

鈴村さんは八尋兄様の運転手なのだ。しかも、ほぼ専属に近いぐらいな感じなのだ。


八尋兄様は今日出勤したはずだけど………?



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