白い気球の赤いベル
私は虚しく目的地に足を踏み入れた。そして右を向く。もう仮病も使えない。

六年間、私が通っていた世間が田舎と呼ばれるならば、此処はまるで人口密度の高い地方都市のようだ。空気が薄汚く、偽りだらけのフィギアケース校舎は目が回りそうなくらい、毎日混み合っている。私が進む、360度の内350度は地味な紺色で埋めつくされていることだろう。向かい側から来る者、私の後ろを歩く者、走って前を横切る者、隅で話す者。私は一番遠い「五」をひたすら目指している。

誰かに言われたわけではない。しかし、わたしは今日も今日を演じてしまう。きっと誰でも偽物だ、此処に居る限り。
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