リングは彼女に


「よし、今度も俺が勝つ」ダーツを親指と人差し指で摘む様に持ち、ボードの方を向いた。


「あ、和人くん。いつもハンデ貰っていて悪いから、ダーツはハンデあげるね。もっと前に立っていいよ」


 彼女はそう言うと。ダーツボードのかなり近くまで俺の背中を押した。床に貼ってあるスローラインを表したテープよりも、ずっとずっと前だ。



「こんな近くにいたら、逆にやりづらいよ」



「いいから、ほら、早く」理那はスローイングのポーズをして、俺を急かす。


 なんかおかしいな? いつもだったら逆なのに……



 改めてダーツボードへと狙いを定める。「えい!」ダーツを放った。
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