リングは彼女に
第5章
大塚さん再び
「おい君、最近疲れてるじゃないか。どうかしたのか?」
そう言ったのは大塚さんだった。いつもの喫煙所で、いつもと同じ缶コーヒーを飲んでいる。
「ええ……疲れていないと言えば嘘になりますね……」
俯き加減で答える。頭が重たくて前かがみになる。このまま床に倒れてしまいそうだ。
「おいおい、なにかあったのか? 景気付けに鰻でも食べに行くか? 近くに美味い店があるんだ。特別に奢ってやるぞ」
「いえ、今日は遠慮しておきます。すみません」今はそんな気分になれない。
「そうか……それにしても、ほんとに元気ないな、何かあったのなら相談に乗るぞ。何でも言ってくれ」
そう言われても、女と同居してて、遊び歩いてて疲れてます。なんて口が裂けても言えない。
昨夜も二人で居酒屋へ出掛けて、結局朝まで飲み明かしてしまった。